クトゥルフシナリオ  桃源郷 推奨技能 : 目星、歴史、対人技能、戦闘技能、オカルト、図書館、聞き耳 推奨人数 : 2~6人 プレイ時間 : ボイセで5、7時間程度 舞台 : 日本 その他 : 戦闘あり。 持ち物にアナログ時計があれば進めやすいかもしれない。 シナリオ概要 : とある村の中を探索する制限時間ありのクローズドです。 NPCの詳細な設定はお好みで決めてください。 改変、動画化などはご自由にどうぞ。 <ネタバレ> 事故に巻き込まれた探索者たちがたどり着いた村は生と死の境に存在する世界です。 探索者は時間内に六文銭を集めて「向こう側」に渡らなければなりません。 期限は桃の実が成るまで。 一日目は花が咲いています。 二日目は花が枯れます。 三日目に桃の実が成ります。 三日目の収穫祭が始まるまでに「向こう側」に渡ることができればクリアです。 もしも収穫祭で桃の実を食べてしまったら、これまでの人生を忘れ、自分のことを「この村で生まれ育った村人の一人」だと信じ込んでしまいます。 そして、村人として一生この村で生きていくことになるのです。 <NPC情報> ・コハル(29) 村長夫妻の娘。 その正体は十年前の飛行機事故で行方不明になった当時19歳の河井春子。 村の桃を口にしてしまったためにこれまでの人生を忘れ、村人の一人になってしまった。 勿論村長夫妻の実の娘ではないが、本人や村の人間はそう信じ込んでいる。 昔の記憶はなくしているが、時折「河井春子」の意識が戻ることがあるようだ。 ・村長 探索者たちがたどり着いた村の村長。 探索者たちが来た翌日に寿命を迎える。 <硬貨入手先> ①農作業を手伝う(二日目、朝) ②日記帳の間 ③囲炉裏の中 ④収穫祭の準備を手伝う(二日目、三時頃~) ⑤村の倉庫(三日目) ⑥社の中(村長を見送った後) <探索できる箇所概要> ・村の外   探索者たちが最初に目覚める林の中。ここにいる間は時間が経過しない。 ・村の広場   村の中央。   東、北、西に延びる道がある。 ・東の社   大きな社。一、二日目は入ることができない。   社の中に「お迎え」の舟に乗るための船着場がある。   舟に乗るためには六文銭が必要。 ・北の田畑   桃の林に囲まれた田畑。午前中に村人が農作業している。 ・西の川原   「向こう側」に渡るための川原。   渡るための舟に乗るには六文必要。 <導入> あなたたちは連休を利用してとある渓流の川下りに参加しています。 ライフジャケットを着て、あなたたちは同じボートに乗り込みました。 川から眺める渓流の風景は素晴らしく、時折体に掛かる水も冷たく心地のよいものでした。 あなたたちが川下りを堪能していると、不意にガイドが悲鳴をあげます。 「危ない、伏せろ!」 次の瞬間、ボートに激しい衝撃が走り、大量の水があなたたちを飲み込みます。 水の轟音や悲鳴を遠くに聞きながら、あなたの意識は遠のいていきました。 あなたたちが目を覚ますとそこは柔らかな若草に覆われた小さな川原でした。 どうやら流れに飲み込まれた後、この川原に打ち上げられたようです。 あれほど激しい激流に飲まれたにも関わらずあなたの体には傷一つありません。 辺りを見渡せば他の探索者も同様に川原に倒れています。 ◆幸運  成功すれば自分の荷物が近くにあったことにして構いません。  ただ携帯電話等は圏外になっています。  アナログ時計を持っている探索者がいれば、時計の針が9時で止まっていることを伝えてください。 《周りの様子》 見覚えのない場所です。周りはみずみずしい香りの花が咲き乱れる林に囲まれ、その間を縫うように澄んだ水を湛えた小川が流れています。 空には太陽が昇っています。どうやら今は朝のようです。 ◆全体に目星  周りは見渡す限り林に囲まれ、川の傍を離れて闇雲に歩き回ると迷ってしまいそうです。 ◆川原に目星  探索者以外には誰もいないようです。乗っていたボートも見当たりません。 ◆林に目星  林を構成する木は全て同じ種類であると分かります。  全ての木に花が咲いています。実がなっているものは一つもないようです。   →◆知識、または草木に関する技能 等     桃の木であると分かります。      →◆アイデア (現在3月下旬から4月上旬でない場合)        あなたは桃の花が咲くのは3月下旬から4月上旬頃だということを思い出します。        季節外れに咲き乱れている花に寒気を感じたあなたは0/1のSANチェックです。 ◆小川に目星  上流から何かが流れてくるのが見えました。よく見ると木製の櫛のようです。   ◆櫛に目星    丁寧に作りこまれた櫛です。    よく見ると「コハル」という名前が彫られています。    <クリティカル> 桃の木で作られた櫛だと分かります。   ◆アイデア(探索者がどこに行くべきか迷っている場合)    上流に行けば誰かいるのではないかという考えに至ります。 ✩ KP情報 林の中にいる間は時間が経過しません。 探索者がいくら探索に時間をかけようと太陽の位置は変わりません。 <アイデア>等でそのことに気がついた探索者がいれば0/1d3のSANチェックをさせましょう。 《小川の下流に行く場合》 あなたたちは小川の下流を目指すことにしました。 似たような景色の中、しばらく川沿いに進んでいくと、地面がぬかるんだ沼地のような場所に出ました。 小川の水はこの沼地に染み込んでいるようです。 周りは相変わらずみずみずしい香りの花が咲き乱れる林に囲まれています。 ✩ KP情報 下流には何もありません。 沼地の周りは同じような景色が広がっているだけです。 <上流へ> あなたたちは小川の上流を目指すことにしました。 似たような景色の中、しばらく川沿いに進んでいくと、小さな山のふもとと思わしき場所にたどり着きました。 目の前には人一人がようやく通れるような小さな穴が空いています。 小川はその穴の先に続いているようです。 ◆穴に目星  穴は狭く、数十歩分の奥行があるようです。  その先に微かに光が見えます。 ◆聞き耳  穴の奥から微かに人の話し声のようなものが聞こえます。 《村の広場》 狭い穴を抜けたあなたたちは広々とした明るい空間に出ました。 そこは小さな村の広場のような場所でした。 小さな家が整然と並び、人々が談笑を楽しんでいました。 ◆アイデア (アナログ時計を持っている探索者のみ)  止まっていたはずのアナログ時計が時を刻んでいることに気が付きます。  針は9時を少し過ぎたあたりを指しています。 ◆村全体に目星  村の東、西、北に道があることに気づきます。 (探索者の入ってきた穴の方角が南になります) ◆家に目星  似たような小さな家が整然と並んでいます。  よく見ると村の奥に一際大きな家があることに気づきます。 ◆村人に目星  子供も、大人も、老人も、皆昔話に出てくるような着物を着ています。  ◆歴史、人類学   少なく見積もっても鎌倉時代以前の日本でよく着られていた着物であることが分かります。 ◆聞き耳  村人の会話から村長と思わしき老人を特定することができました。 《村長》 探索者が村長に話しかけると村長は驚いたように探索者を見つめます。 探索者が村人や村長に話しかけずにその場を離れて村を探索しようとした場合は村長から探索者に声をかけてください。 村長はまず、探索者が何者なのか、どこから来たのかなどの質問を投げかけます。 探索者から質問があれば答えてあげてもいいでしょう。 予想される質問とその回答 :  ・ここはどこなのか→ 落人(おちゅうど)の集落。  (落人・・・・源平合戦において敗北し僻地に隠遁した敗残者のこと。探索者が知らないようなら<歴史>を振らせてもいいでしょう。) ・奥の家について→ 村長の家。家には妻と娘がいる。 ・村、村人について→ 村の人口は現在50人程度。             稲作、畑などの農業を主体にしている。             外部との交流はない。             未だに現代が平安時代末期だと思っているようだ。 ・東、西、北の道について→ 東 : お社がある。                 「お迎え」の舟に乗れるらしい。               西 : 川原がある。                 「向こう側」に渡るための舟があるらしい。 (「向こう側」について聞かれたら単に向かい側の岸のことだと答えましょう)              北 : 田畑がある。泉があり、そこから飲み水を汲んでいる。 ・村の外の林について→ 全て桃の木である。             不思議なことに村に旅人が訪ねてくる時に花を咲かせる。             村の周りで採れる桃はみずみずしく、甘くておいしい。 一通り会話をしたら、この村に滞在する間は村長の家に泊まる許可を出しましょう。 村長と話し終わったあたりで正午頃になるでしょう(あくまで目安です)。 午後からは自由に探索させましょう。 ✩ KP情報 ・この村の住人は、自分たちは落人の末裔だと信じていますが、元は探索者と同様事故か何かに巻き込まれてこの村にたどり着いた人たちです。この地で採れる桃を口にしてしまったことでこれまでの人生を忘れてこの村の「村人」になってしまいました。 ・住人たちは「向こう側」がどうなっているのか知りません。向こう側に渡って戻ってきた者がいないからです。 ★ これからの流れについて 桃の実が成るまでの三日間に渡り村を探索します。 同じ場所を探索しても、例えば一日目と二日目では得られる情報が違う箇所があります。 一箇所の探索に掛かる時間は大体一、二時間程度とします。 ★一日目 <村長の家> 村の奥にある、周りの家よりも一回り大きな家が村長の家です。 家に向かうなら村長も付いてきてくれます。 あなたたちが家に入ると、村長の妻が笑顔で出迎えてくれます。 妻はあなたたちを客間に通し、滞在中はこの部屋を自由に使うように勧めてくれます。 - 家の構成 - 村長の家は玄関、台所、居間、客間、2つの寝室で構成されています。 厠は家の外にあるようです。 《玄関》 広々とした玄関です。 《台所》 玄関のすぐ横にあります。 現代では考えられないほど簡素で使いづらそうな台所です。 ◆目星  切れ味の悪そうな包丁を見つけます。  (ダメージ1d4+db) 《居間》 中央に囲炉裏のある素朴な部屋です。 集会所として使われることもあるのか、少し広いように感じます。 ◆部屋に目星  素朴な花瓶に林の中で見たものと同じ花(桃の花)が生けてあります。 ◆囲炉裏に目星  パチパチと音を立てて火が燃えています。  灰の中に一枚の硬貨が埋まっているのを見つけます。  上手く取ることができたか、幸運を振ってください。  失敗した場合は、硬貨を取ることはできましたが火傷により1d3のダメージを負ってください。  (火を起こすのが大変なため、囲炉裏の火を消そうとすると村長か妻に制止されます。)  ◆硬貨に歴史、オカルト   昔日本で使われていた硬貨だと分かります。   三途の川の渡し賃として知られる「六文銭」と同様の硬貨であることが分かります。 《客間》 藁を編んで作ったような寝具と、小さな机が置かれている部屋です。 ◆寝具に目星  寝具の下から1枚の紙きれを発見します。どうやら日記のようです。  「6月10日   乗っていた飛行機が墜落した   死ななかったどころか怪我ひとつなかったのは奇跡だ   近くに村があったのも幸運だった   村の周りには綺麗な桃の花が満開で、素晴らしい景色だ   村長さんも奥さんも親切だ   早く助けが来るといいけれど」   ◆知識、歴史 等    2006年の同日に探索者たちが川下りをしていた辺りで飛行機の墜落事故があったことを思い出します。    生存者はおらず、大勢の死者や行方不明者を出した大事故でした。    【注意】 実際2006年にはこのような事故は起きていません。このシナリオにおけるフィクションです。実際の飛行機事故とは関係ありません。 ◆机に目星  提灯を見つけます。  火を灯せば結構明るくなります。 《寝室1》 村長夫妻の寝室です。 ◆部屋に目星  部屋の一角に掛け軸のようなものが掛けられています。  掛け軸には何も書かれていません。 《寝室2》 夫妻の娘、コハルの部屋です。 一日目は鍵が掛かっているので中には入れません。 《厠》 申し訳程度に作られた狭い空間の中央に大きめのバケツのようなものが鎮座しています。 中には大量の排泄物が入っているようです。 嗅ぐに堪えない臭いを吸い込んでしまった探索者は1/1d2のSANチェックを行ってください。 <東の社> 村の東の道を抜けたところに大きな社があります。 入口には大きな2体の狛犬が鎮座しており、社の前には賽銭箱があります。 社の周りは林で囲まれています。 一日目は社の中に入ることはできません。 ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  村の外のものと同様に花が咲き乱れています。 ◆全体、または社に目星  社の柱に落書きを発見します。  「地獄の沙汰も金次第   金がなければ渡りもできぬ」 と書かれています。 ✩ KP情報 これは「お迎え」の舟に乗る、または「向こう側」に渡るには金が必要だと言うことを示唆しています。 ◆賽銭箱に目星  箱の中は暗くてよく見えません。  よく見ると、箱に「汝、浄銭を盗むべからず」と書かれています。 ✩ KP情報 これは賽銭箱の中身を盗んではいけないという探索者への警告です。 もし賽銭箱を漁ろうとする探索者がいれば、入口の2体の狛犬が動き出します。 1/1d4+1のSANチェックの後戦闘を行ってください。 狛犬についてはルールブックのオオカミのステータスを参照してください。 賽銭箱の中には何も入っていません。 <北の田畑> 村の北の道を抜けると村人たちの田畑があります。 みずみずしい香りの林が田畑を囲むように広がっています。 奥には清らかな沢と泉があります。 《沢と泉》 水は清らかで飲むことができます。 ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  村の外のものと同様に花が咲き乱れています。 ◆田畑に目星  畑の中に若い女性を見つけます。  他には誰もいないようです。 《女性》 女性は村長夫妻の娘でコハルと名乗ります。 ここで何をしているのかと問えば、彼女は明後日に控えた収穫祭のために桃の様子を見に来たのだと答えます。 - RPメモ - ・収穫祭は収穫した桃を社の神様に捧げ、豊穣を感謝する祭りです。 ・彼女は村長の代わりに明後日の収穫祭の責任者を任されています。 ・村人たちは基本的には毎朝ここで畑仕事をしています。明日の朝ここに来れば村人に会えるでしょう。 ・探索者が村の外で櫛を拾っている場合は、コハルに櫛を渡すことができます。コハルは櫛を受け取るとまるで上の空といった様子になり、「桃を口にしてはいけない」とつぶやきます。 ✩ KP情報 この櫛は河井春子が飛行機事故に巻き込まれた時に所持していたものです。 コハルが桃を食べるなと警告したのは、櫛を手にしたことでまだ村人ではなかった時の記憶が一瞬だけ蘇ったからです。 <西の川原> 村の西の道を抜けると、そこは川原で、足元には綺麗な花畑が広がっていました。 川原には一人の老婆がうずくまっています。 ◆川に目星  水面は鏡のようにしんとしています。  水は不自然なほど澄んでいますが、魚影は見えません。  <クリティカルまたはファンブル>  さざ波ひとつない川の中にあなたは見てしまうことでしょう。  楕円形のなにかから突き出した不気味に蠢く無数の刺を。  楕円の端には厚い唇のようなものがついており、その顔と思わしき場所から生えた三本の茎の先に黄色い目があります。  不意に、こちらを探るような不気味な黄色い瞳と目が合ってしまいます。  この世のものではない何かに見つめられ、あなたは体の芯から凍りつきます。  湖の住人グラーキを見てしまったことによるSANチェックです。1d3/1d20でどうぞ。  また、グラーキに遭遇した探索者にはクトゥルフ神話技能を3%差し上げます。   ◆周りに目星  村の周りを囲んでいるはずの桃の木は一本もありません。  その代わりに川の向こうには不自然に闇が広がっています。  目を凝らしても何も見えません。  闇に吸い込まれるような恐怖を感じたあなたは0/1d3のSANチェックです。   ✩ KP情報 この闇の向こうが「向こう側」です。 泳いで向こう側に渡ろうとする探索者がいれば、老婆が声をかけてきます。 「お客様、泳いで向こうに渡ることはできないのでございます。」 その警告を無視して川に入るならば問答無用でグラーキと遭遇させ、西の川原にいる探索者全員に1d3/1d20のSANチェックをさせてください。 ◆老婆に目星  白い着物を着た、髪の乱れた小柄な老婆です。  水際にしゃがみこんで小石を積み上げています。 《老婆》 老婆に話しかけると、老婆はにこやかに探索者たちに挨拶をしてくれます。 探索者に何者なのか、何をしているのかと聞かれると、「舟渡しをしております」と答えます。 船渡しについて聞かれると、「お客様を向こう側へお渡しするのが仕事でございます」だと答えます。 それ以外の質問には答えません。 一通り会話が終わったら「お客様は渡し賃を用意していらっしゃらないようです。またお越し下さいませ。」と言った後、またしゃがみこんで小石を積み上げはじめます。 ✩ KP情報 老婆は探索者が六文以上持っていない限り相手にしません。 <一日目の夜> 探索者がまだコハルに会っていない場合は探索者が村長の家に帰ってきた時点でコハルに会わせてください。 東の田畑で得られる情報をRPによってここで伝えてもいいでしょう。 探索を終え、村長の家に帰ってきたあなたたちは、居間で夕食を振舞われます。 夕食を終えて囲炉裏を囲んでいると、おもむろに村長が語り始めます。 内容は以下の通りです。 ・自分は明日寿命を迎える。 ・寿命を迎える村人は夕暮れにお社へ入り、その向こうの船着場から舟に乗る。自分も明日その舟に乗る。 ・よかったら探索者に自分の旅立ちを見送って欲しい。 更に雑談をするのであれば、参考までにどうぞ ・収穫祭に参加できないのが悔やまれる。 ・自分亡き後の村長の仕事は娘のコハルに任せる。 ・この村の人間は自分の寿命を悟り、受け入れることができる。 など あとはなんかもう適当に部屋を探索するなり雑談するなりして寝てください。 ★二日目 基本的に探索で得られる情報は一日目と同じです。 以下の情報は主に一日目と異なる情報だけとなっています。 また、二日目は夜(村長を見送った後)以降になると昼間とは異なる情報が得られる箇所があります。 起床して朝食を済ませると村長は村の広場に、コハルは北の田畑に出かけていきます。 村長の妻は食器の片付けや家事をしています。 ✩ KP情報 この時点で時間は午前8時頃とします。 村長や妻から聞き出せる新たな情報は特にありません。 探索者が彼らに話しかけるのであれば、世間話でもしておきましょう。 畑仕事を手伝うと硬貨が貰えるので、コハルから畑仕事に付いてくるように誘ってもいいかもしれません。 ★昼間に得られる情報 <村長の家> 《居間》 ◆部屋、または花瓶に目星  素朴な花瓶に枯れた花(桃の花)が生けてあります。 《コハルの寝室》 二日目からコハルの寝室に入ることができます。 部屋には客室と同様の寝具、机、小さな本棚があります。 ◆机に目星  三枚の紙切れを見つけます。  どうやら誰かの日記のようです。  日記にはそれぞれこう書かれています。  一枚目  「6月11日   村の桃の花が枯れていた   畑仕事を手伝ったらお礼に硬貨を貰った   物々交換のこの村でお金を使うことなんてあるのだろうか」  二枚目  「6月12日   朝起きたら小さな桃の実がなっていた   夜になると更に大きく育つらしい   今夜は村の収穫祭   神に感謝を捧げる祭りだ   村の桃は甘くて美味しいらしい   夜が楽しみだ」  三枚目  「6月13日   食べなければよかった   あれさえ、あれさえ食べなければこんなことにはならなかった   私は、私が、思い出せない   私は、どうして、どうやって   分からない、分からない   私はこれからどうすれば、どうなるの   何をすれば、ここから出られたの   怖い、怖い、怖い   たすけて、私は、村の、怖い、これから」     三枚目の日記より狂気を感じたあなたたちは1/1d4のSANチェックです。 ◆図書館(本棚)  ●「死後の世界」という本を見つけます。    内容は以下の通りです。 ・人は死ぬと三途の川を渡って死後の世界に渡る。 ・川を渡るための賃金としては、一般的に六文銭が知られている。 ・死後の行き先を決めるのは神々である。死者は神の裁判を受けることで正式にあの世に渡ることができる。   ●日記帳を見つけます。 日記帳の前半には平凡な日常が綴られていますが、後半はメモのような、書きなぐったような単語で埋まっています。 意味不明な単語が並ぶ中、かろうじて「河井春子」という名前を読み取ることができました。  ◆日記帳に目星   日記帳の間に硬貨が一枚挟まっていました。     ◆歴史、オカルト      昔日本で使われていた硬貨だと分かります。      三途の川の渡し賃として知られる「六文銭」と同様の硬貨であることが分かります。 ◆図書館またはオカルト  ●「異世界の手引き」という本を見つけます。   オカルト的な視点から描かれた本のようで、本当かどうか疑わしい胡散臭い内容が綴られています。   内容は以下の通りです。 ・異世界に行くには様々な方法がある。 ・一般的な方法として呪術やパワースポット、事故などが挙げられる。 ・異世界から帰るためには来た時と反対のことをすればいいと言われている。 ・異世界でタブーとされる行為としては風呂に入る、向こうの食べ物を口にするなどがよく知られている。特に異世界の特産品等はNG。 ✩ KP情報 客間にあった日記と机の上の三枚の日記、そして日記帳の文章は河井春子が書いたものです。 紙切れの三枚目は収穫祭で桃を食べてしまい、消えかけている記憶に恐怖と不安を感じながら書いたもので、日記帳の後半は彼女の記憶にある言葉を乱雑に書きなぐったものです。 情報を得たあとでコハルにこれらの本や日記のことを聞いても、彼女は「何のことか分からない」「私の書いたものではない」と答えます。 これは彼女がすでに河井春子だったときの記憶を失っているからです。 当然河井春子のことを聞いても「知らない」と答えます。 <東の社> 社の中に入ることはできません。 ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  花は全て枯れています。 <北の田畑> 探索者が午前中に立ち寄ると、畑で村人たちが農作業をしています。 村人たち(またはコハル)は探索者たちを見つけると手を振って挨拶をしたあと、農作業を手伝ってくれないかと頼んできます。 これを引き受けると、お礼に一枚の硬貨と収穫した野菜を分けてもらえます。 農作業は正午頃に終わります。 午後三時頃から広場で収穫祭の準備をするのでまた手伝って欲しいと誘われます。 これに応じるとまたお礼に硬貨が一枚もらえます。 ◆硬貨に歴史、オカルト  昔日本で使われていた硬貨だと分かります。  三途の川の渡し賃として知られる「六文銭」と同様の硬貨であることが分かります。 ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  花は全て枯れています。 <西の川原> 得られる情報は一日目と同じです。 <二日目の夕方> 夕方(午後五時頃)になったら一旦探索を切り上げさせ、村長の家に帰らせましょう。 探索者が夕方に家の中にいる場合は村長から探索者に話しかけてください。 村長は探索者が帰ってくると、悲しそうに微笑んで 「もう行かなければならない。この日にあなたたちが居合わせたのも何かのご縁だ。私を見送ってはくれないだろうか。」 と頼みます。 探索者は村長、妻、コハルと共に東の社に向かいます。 東の社は既に村長を見送りに来た村人でいっぱいでした。 村長は集まった村人たちを見渡すと、これまでの感謝を述べ、村を頼むと言い残すと観音開きの扉を開けて一人でお社の中に入ります。 周りからは村人のすすり泣く声が聞こえます。 お社の中は意外と広く、何も物が置かれていないようです。 木製の床を挟んだ入口の扉の真正面に大きな赤い鳥居が見えます。 鳥居の向こうは白いもやがかかっており、微かに水の音が聞こえます。 鳥居をくぐろうとした村長は一度だけ探索者を振り返り、唇を微かに動かしました。 ◆聞き耳、または目星とアイデアの両方成功 「こちらには来てはいけない」 と言っているのが分かります。 ✩ KP情報 鳥居の向こうは「お迎え」の舟に乗るための船着場です。 こちらから舟に乗ると死後の世界に行くことができます。 もう戻ってくることはできません。 村長は優しく微笑むと再び前を向き、鳥居をくぐります。 キイ、キイという音と静かに水を切るような音が聞こえ、だんだん遠ざかっていきました。 音が聞こえなくなった頃、入口の扉がひとりでに閉じます。 ここで目星を振ってください。 ◆目星  扉が閉まる直前、床で何かが光りました。 気づくと空は真っ暗になっています。 村長を見送った村人たちは自分の家に帰っていきます。 村長を見送った後、社の中に入れるようになります。 しかし見送った後ですぐに社の中に入ろうとすると「神聖な場所だから」などと言われて村人やコハルに止められるので、周りに人がいない時に限り中に入ることができます。 ✩ KP情報 床で光っているのは村長の落とした硬貨です。<アイデア>でそのことに気づかせてもいいでしょう。 ★夕方のイベント後に得られる情報 <村長の家> コハルや村長の妻は村長を失った悲しみに沈んでいます。 村長のことや明日の収穫祭の話を振れば返事はしますが、積極的に探索者たちと会話を交わすことはありません。 村長夫妻の部屋 ◆部屋、または掛け軸に目星  掛け軸に文字が書かれています。  昔の文字で書かれているので、読むには<知識>または<歴史>でどうぞ。  ◆知識、歴史   掛け軸には短歌が書かれています。   「生(い)く人よ 六つ数えて 渡すべし 桃源の木の 実の結ぶまで」 ✩ KP情報 これは、生き延びたかったら村の周りの桃の実がなるまでに(つまり収穫祭までに)硬貨を六文揃えて川を渡らなければならないということを示唆しています。 <東の社> 先述の通り社の中に入れるのは、社の周りに人がいない時だけです。 ◆聞き耳  社の中からうめき声のようなものが聞こえます。 社の中は薄暗く、外の明かりも届かないようです。 目を凝らすと、中に複数の人間の姿が見えます。 探索者が中に入るのであれば、グラーキの従者1d3+(探索者の人数)体との戦闘になります。 《戦闘について》 ステータスはルールブックのグラーキの従者のページを参考にしてください。 グラーキの従者の外見はほとんど人間と変わりませんが、3ターン後からだんだん萎びていき、生ける屍のような姿に変わります。 その様子を見てしまった探索者に1/1d8のSANチェックをさせましょう。 グラーキの従者は強い光を浴びると「緑の崩壊」を起こして死んでしまいます。 提灯や懐中電灯などの光を浴びせることで「緑の崩壊」を引き起こすことが可能です。 「緑の崩壊」で死ぬのを見た探索者には1/1d10のSANチェックをさせてください。 戦闘終了後、床に落ちている硬貨を拾うことができます。 探索者が夕方のイベントの時点で硬貨が落ちていることに気づいていなければ、ここで目星をさせて気づかせてください。 ◆部屋に目星  気になるものはありません。(硬貨以外は何もありません。) ◆鳥居に目星  人が一人通れそうな大きさの赤い鳥居です。  鳥居のすぐ先に階段があります。 階段を降りると、そこは水面ぎりぎりの小さな船着場です。 船着場の向こうには一面川とも湖とも言えない風景が広がっており、その先は濃いもやのせいで何も見えません。 <目星>を振りたいという探索者がいれば、振らせてあげてください。 成功しても何も見えませんが、クリティカルかファンブルなら水の中に潜むグラーキを見てしまいます。 初見の場合は1d3/1d20のSANチェックです。 船着場には一人の老婆が椅子に腰掛けています。 探索者が話しかけると「お迎えの舟にお乗りになりますか」と聞いてきます。 肯定すると、六文が揃っていれば舟に乗せてくれます。 探索者が複数人の場合でも六文揃っていれば全員で乗ることができます。 → 《エンド2 : もやの向こうの景色》 六文が揃っていない場合は、「お客様は渡し賃を用意していらっしゃらないようです。またお越し下さいませ。」と答えます。 否定すれば、「左様ですか」と言った後、探索者から興味を失います。 ★三日目 朝、あなたたちがコハルと一緒に朝食を食べていると、村長の妻があなたたちに小さな桃の実を差し出します。 今はまだ食べられないが、収穫祭が始まる夜までには甘く、大きな桃に育つのだそうです。 すると、ふとコハルが 「祭りに間に合ったら最後。収穫祭までに帰らないと戻れなくなる」 とうわごとのように呟きます。 母親が心配そうにコハルの名前を呼ぶと、彼女は正気に戻ったようにはっとあなたたちを見ます。そして 「今夜の収穫祭楽しみですね。皆さんも気に入ると思います。」 と何事もなかったように食事を続けます。 小さな桃の実を食べることはできますが、実は固く少し苦いため、飲み込む前に吐き出してしまうでしょう。 ★三日目に得られる情報 <村長の家> 《居間》 ◆部屋、または花瓶に目星  素朴な花瓶に小さな桃の実がなった小枝が生けてあります。 <東の社> ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  木には小さな桃の実がなっています。 <北の田畑> ◆林に目星  全て桃の木で構成されています。  木には小さな桃の実がなっています。 <村の広場> 広場の中央では収穫祭の準備が着々と進んでいます。 探索者が二日目に硬貨を貰いそこねていた場合、ここで手伝いをさせて硬貨を入手させてもいいでしょう。 ★探索が終わったら 探索が終了したら(または夕方に近い時間帯になったら)、探索者は村人から声をかけられます。 どうやら収穫祭の準備の人手が足りないらしく、探索者たちに村の倉庫から薪を運ぶのを手伝ってほしいとのことです。 <村の倉庫> 倉庫は村の広場の一角にあります。 木造の小屋で、扉に鍵は掛かっていません。 中はそこそこの広さがありますが、農具などが乱雑に置かれています。 ◆目星  ・無事薪を見つけることができました。   その傍に硬貨が一枚落ちていました。   この<目星>は薪を見つけるまで何回行っても構いません。  ・一枚の新聞紙を見つけます。   新聞には2006年6月10日に発生した航空機事故の記事が載っています。   内容は、渓流の付近に航空機が墜落し、多くの死者、行方不明者を出したというものです。   記事の最後には死者、行方不明者の名前が綴られています。   ◆更に目星、幸運    行方不明者の名前の一覧から「河井春子」の名前を見つけます。 <西の川原> 硬貨を六枚揃えた状態で西の河原の老婆に話しかけると 「向こう側へ渡る舟にお乗りになりますか」と聞いてきます。 肯定すると、舟に乗せてくれます。 探索者が複数人の場合でも六文揃っていれば全員で乗ることができます。 → 《エンド1 :元の世界》 否定すれば、「左様ですか」と言った後、探索者から興味を失います。 <エンディング> ・硬貨を六枚集めて西の川原から舟に乗った → 《エンド1 : 元の世界》 ・硬貨を六枚集めて社の船着場から舟に乗った → 《エンド2 : もやの向こうの景色》 ・時間切れ(舟に乗らなかった) → 《エンド3 : 村人》 ・途中で死んだ、等 → 《エンド4 : 葬儀》 ✩ 注意 もし船に乗って川を渡る際にコハルや村人に一緒に来るように誘っても、 「生まれ育った村を出るつもりはない」などと言って付いてきません。 <説得>や<信用>、<言いくるめ>に成功しても彼らを連れて行くことは不可能です。 探索者に村の(もしくはこの世界の)異常性を指摘されると、ただ悲しい顔をします。 探索者が舟に乗る意向を伝えた場合、彼らは驚き、何があるか分からないから危険だと警告はしますが強くは引き止めません。 《エンド1 : 元の世界》 老婆に六文を渡すと、あなたたちの耳に静かに水を切る音が聞こえてきます。 目を凝らすと暗闇のむこうから一隻の舟がこちらに向かってくるのが見えました。 舟が川原に泊まると、老婆はあなたたちに舟に乗るように促します。 「行ってらっしゃいませ。よい旅を」 という老婆の声に見送られ、あなたたちを乗せた舟はゆっくりと暗闇の先へ進んでいきます。 聞こえるのは静かな水音だけ。 舟が進むにつれ、あなたたちはまるで重力に引き寄せられるかのように体が重くなっていくのを感じます。 同時に、全身がずきずきと痛み始めます。 想像を絶する体の重さと痛みについに耐えられなくなったあなたたちは闇の中で意識を手放します。 あなたたちは病院のベッドで目を覚まします。 後にあなたたちは知ることでしょう。 あなたたちはあの川下りで激流に飲まれた後、昏睡状態で数日間生死の境をさまよい続けていたのだと。 頭は重く、全身はずきずきと痛みます。 でもそんなことはどうでもいいことです。 あなたは生きて帰った。 それだけで十分ではありませんか。 シナリオクリア報酬 生還 : 1d10+1d8 全員生還 : 1d6 《エンド2 : もやの向こうの景色》 老婆に六文を渡すと、あなたたちの耳に静かに水を切る音が聞こえてきます。 目を凝らすと白いもやのむこうから一隻の舟がこちらに向かってくるのが見えました。 舟が船着場に泊まると、老婆はあなたたちに舟に乗るように促します。 「逝ってらっしゃいませ。よい旅を」 という老婆の声に見送られ、あなたたちを乗せた舟はゆっくりともやの先へ進んでいきます。 聞こえるのは静かな水音だけ。 舟が進むにつれ、あなたたちはまるで体が重力を失ったかのようにだんだんと軽くなっていく感覚に陥ります。 暫く行くと少しずつもやが晴れ、目の前の景色が鮮明になります。 その先にどのような景色が広がっていたのかはあなたたちにしか分かりません。 なぜなら、そこはあなたたちのような死んだ人間しか立ち入ることのできない世界なのですから。 死後の世界に着いてしまい、ロスト。 《エンド3 : 村人》  →探索者が広場にいた場合 周りの景色が夕焼け色に包まれた頃、村の広場に村人が続々と集まってきました。 広場に設けられた大きなテーブルの上にはほかほかと湯気を立てる作りたての料理と、収穫したばかりの大きくてみずみずしい桃がたくさん盛られています。 あなたたちが周りをきょろきょろと見渡していると、どこからともなく楽しげな太鼓や鐘のお囃子が聞こえてきます。 村人たちは皆それぞれ歌ったり、踊ったり、楽器を演奏したりと、とても楽しそうでした。 村人はあなたたちに気づくと、テーブルの上にある料理や収穫したばかりの桃を勧めてくれます。 その甘くてみずみずしい香りに我慢できずにあなたたちは桃を頬張ります。 あなたたちの口の中に甘い幸せが広がり、全てがどうでもよくなってしまいます。 今が幸せであること以外、もう何も思い出せそうにはありません。 さあ、収穫祭を楽しみましょう。 今日は「あなたの」村の、大切なお祭りなのですから。 今までの記憶を失い、村人の一人として生きていくことになります。ロスト。 →探索者が広場の外にいた場合 周りの景色が夕焼け色に包まれた頃、あなたたちの耳に楽しげな太鼓や鐘の音が聞こえてきます。 どこか懐かしいその音色に誘われ、無意識にあなたたちは広場へと向かいます。 広場には既にたくさんの村人が詰めかけており、皆それぞれ歌ったり、踊ったり、楽器を演奏したりと、とても楽しそうでした。 広場に設けられた大きなテーブルの上にはほかほかと湯気を立てる作りたての料理と、収穫したばかりの大きくてみずみずしい桃がたくさん盛られています。 村人はあなたたちに気づくと嬉しそうに迎え、収穫したばかりの桃を勧めてくれます。 その甘くてみずみずしい香りに我慢できずにあなたたちは桃を頬張ります。 あなたたちの口の中に甘い幸せが広がり、全てがどうでもよくなってしまいます。 今が幸せであること以外、もう何も思い出せそうにはありません。 さあ、収穫祭を楽しみましょう。 今日は「あなたの」村の、大切なお祭りなのですから。 今までの記憶を失い、村人の一人として生きていくことになります。ロスト。 《エンド4 : 葬儀》 あなたはふと目を覚まします。 そこは先程まであなたがいた世界ではありません。 そこはあなたの家でした。 見慣れた部屋に、黒い服を着た、あなたのよく知っている人たちがいます。 母親があなたの恥ずかしい日記を読みながら号泣しています。 友人が泣きながらあなたの黒歴史を語り合っています。 親戚が一点を見つめ、あなたの名前を呼んでいます。 混乱しながらも無意識にその視線を追ったあなたは見てしまうことでしょう。 それは、棺の中に横たわったあなた自身でした。