シナリオ名『その命を捧げよ』 舞台:現代日本、クローズド 推奨人数:2~4人 推奨技能:目星 準推奨(KPの判断):オカルト、精神分析 時間:テキセで4~5時間、ボイセで2~3時間 ・程良いスリルを目指しているが、軽率な行動をするとロストする可能性あり ・呪文を使用したりするので、発狂する可能性はそれなりにある ・戦闘要素も少しあり <あらすじ> なんの変哲もない、いつもの日常、いつもの光景のはずだった。 そしていつもと同じようにマンションのエレベーターに乗り込んだ探索者達を待ち受けていたのは――。 ※都市伝説の「異界への扉」を導入として使用しています。話を知っていても問題ありません <シナリオ背景> 妻を事故で亡くしたNPCが、ニャルラトホテプの甘言にのり妻を生き返らせようと復活の呪文を使ったことが始まり。 暇を持て余していたニャルラトホテプは、たまたま妻を亡くし絶望の淵にいたNPCをみつけ彼の中で「ちょっとした悪戯心」が芽生える。 「死んだ人間を生き返らせる方法があるんだ」 復活の呪文をNPCに教え、どうなるか観客として楽しもうというのが目的。NPCが復活の呪文をマンションの自室で行ったと同時に「よく似ているけど違う空間」を作り出した。 探索者達はこの舞台を盛り上げる為の役者として巻き込まれることになる。 NPCが再び妻を塩に戻すのか、はたまた自らの命を捧げるのか、それとも探索者達の誰かを殺そうとするのか、あるいは人間たちが互いに殺しあうのか…。 どちらにしてもニャルラトホテプとしては愉快なのだ。 妻が不完全な復活を遂げたのは、死体の一部が欠損していたからである。 復活には「完全な死体」が必要だが、そもそも事故により妻の身体は一部が欠損した状態だった。もとより成功するはずがなかったのだ。 もちろんニャルラトホテプは確信犯。あえてNPCにそのことを教えなかったのである。 <NPC情報> 神奈 慶一(かみな けいいち)27歳 STR:14  DEX:12 INT:14 CON:13 APP:18 POW:17 SIZ:14 EDU:16 HP:14 MP14(復活の呪文を使った為減っている) 今回の怪異を引き起こした当事者ともいえる。愛妻家で思慮深く心優しい青年。 お助けNPCなので、探索者の手助けとなるような技能を取らせること。 例:精神分析、応急手当、組みつき、目星、オカルトなど NPCの生還も目的ではあるが、探索者の身代わり犠牲要員でもある。 お助けキャラなので、ステは高めに設定しています。探索者達のステや技能を見て調整して構いません。APP18はただのブラフ。 ※MP減少が3なのは、二度復活の呪文を使った際、万全で挑む為に一度目使用から時間を置いて二度目を使った為である。 神奈 愛莉(かみな えり)享年27歳 神奈慶一の妻。事故により死亡。復活の呪文により蘇るが、失敗だったため「口にするもおぞましきもの」として復活。また術の反動により発狂状態にある。 <導入> ※HOとして、探索者に一人必ずマンションの住人を用意すること。また、引っ越してきたばかりとすること。探索者の部屋は5~6階辺りでいいだろう。 他の探索者はその友人として引っ越し祝いなり、手伝いに来たという設定のほうが導入しやすいだろう。 探索者達がマンションのエレベーターに同乗することが条件なので、たまたま居合わせた赤の他人設定であっても構わない。ここでは一例として皆友人設定とする。 引っ越しの手伝いも順調に進み、気が付けばもう昼過ぎの時間だ。あなた達は休憩がてら、食事に行くことにした。いつも通り軽口や冗談を言い合いながら、エレベーターに乗り込んで1階のボタンを押す。 4階…3階…2階…もうすぐ1階に到着する、そんな時、下降していたエレベーターが突然止まってしまう。電気はついており、停電はしていない。 ・非常ボタンを押しても反応無し、インターフォンも繋がらない ・携帯も不可 少し待ってみるが動く気配もなく、あなた達が不安を覚え始めた頃、急にエレベーターが動き出した。しかし動きだした方向は1階に向けてではなく、上の階に向かってだ。 5階…6階…7階…ついに最上階である8階にまで辿り着き、エレベーターはそこで静かに止まった。 ゆっくり扉が開く。眼前に広がる景色はマンションから見えるいつもそれ――であるはずだった。 いや、確かにいつものそれに違いはないのだ。だがあなた達はすぐに違和感に気づくであろう。 まず暗い。廊下には明かりが一つも付いてないのだ。場違いのように、エレベーターの明かりだけが煌々と灯っている。 そして何より、空が、赤い。 昼過ぎだったはずなのに、まるで夕焼けのような空だ。 そしてあなた達は気づくだろう。太陽も雲も、騒がしいほど通っていた車も、待ちゆく人の気配も、なにもかもがここには「無い」ことに。 まるで自分たちだけが世界に取り残されてしまったような――明らかにここは「似て非なる形容し難い何処か」であると。 SANチェック(0/1d3) 降りるべきか否か。迷うあなた達の目の前に突然見知らぬ美形の男が現れ声を掛けてくる。 男は困惑した様子でここは一体何処なのか、そして少し言い淀んでそれ以前に自分が何者なのか記憶も無いのだと打ち明けた。名前は覚えているようで神奈慶一だと名乗ってくる。 (KP情報:神奈慶一は復活の呪文の使用と、魔術の失敗により異形として蘇ってしまった妻を目の当たりにして己の罪深さを自覚。それにより一時的長期の発狂に陥っており、記憶喪失状態にある。技能は使用可能) ≪心理学≫を振っても本当に困惑していること、嘘をついてないとしか分からない ※もしNPCに精神分析が振られてしまった場合は、ニャルラトホテプにより記憶が制限されているか、もしくは記憶を取り戻しても知らない振りをさせるなどしてもいい。 そんなやり取りをしていると、エレベーターの壁に血のように赤い文字があなた達の目の前で浮かび上がる。 『ここから出るには、対価として誰か一人、その命を差し出さなければならない』 あなた達がそれを理解したのを見計らったようにエレベーターの明かりが消え、辺りは陰に包まれる。 次々と起こる非現実的な現象と脳裏を過る最悪の想像によりSANチェック(0/1) <8階について> ・部屋は801号室から805号室まである ・廊下は薄暗いが、部屋の中は明るくなっている ・部屋にあるキッチンのコンロは使用可能。トイレや風呂、蛇口などで水を出すと真っ赤な水が出てくる。SANチェック(0/1)もしそれを飲んだ場合は「血のような味」により(1/1d3)のSAN減少 ・時計や携帯などで時間を確認したら、すべてエレベーターに乗り込んだ時刻ぐらいから止まっていることに気づくだろうSANチェック(0/1) ・もし部屋の探索が冗長になりそうな場合は、必要ないところは封印されている描写をして探索場所を狭めてしまってもいいかもしれない。 <8階の見取り図と、部屋の見取り図> https://dl.dropbox.com/s/wma82xwbj0i8nc0/8%E9%9A%8E%E8%A6%8B%E5%8F%96%E3%82%8A%E5%9B%B3.png?dl=0 https://dl.dropbox.com/s/694da6i3yfk4ll5/%E9%83%A8%E5%B1%8B%E8%A6%8B%E5%8F%96%E3%82%8A%E5%9B%B3.png?dl=0 <下への階段> 階段を調べるなら≪目星≫ 階段の先は真っ暗で何も見えない。まるで今にも飲み込まんと口を開けているような、黒く塗りつぶされた闇にあなたは言いようもない寒気を覚えるだろう。SANチェック(0/1) (KP情報:階段を下りた先は虚無の闇。どこにも繋がらない空間。一歩でも足を踏み入れた者は永遠に闇の中を彷徨い続ける【探索不能により事実上ロスト】。RPや演出としてSANチェックを入れてもいい) ※ここでロストしても直ちに死ぬ訳ではないので、脱出条件は満たさない アイデアや幸運などで何か物を投げ込ませてみて、何も音がしないなど情報をやんわり与えてみてもいい ここでファンブルが出た場合はロストさせるもよし、所持品をすべて無くさせるもよし(それにより同時に情報も与えられる)SANチェックを増やすなどKPの裁量に任せる <801号室> 番犬の部屋。ケルベロスが鍵を守る部屋 部屋に入ると、廊下の両脇にある部屋の扉全てが板で乱雑に打ち付けられて封印されている。そしてその廊下の先には、巨大な犬のような生物、とでも表現すればいいだろうか。 それはたてがみのように背に無数の蛇を生やし、首が三つも付いている。その首をもたげ低い地の底まで響くような唸り声を上げながら六つの鋭い眼光すべてがあなた達を捕らえている。SANチェック(1/1d6) (KP情報:このケルベロスはもどきであり、実はニャルラトホテプの化身である。しかし能力は伝承に則っている) ドアに≪聞き耳≫で中から獣の唸り声のようなものが聞こえる。 ≪目星≫により、ケルベロスの背後に部屋の天井から鎖のようなものが垂れ下がっており、その先に鍵があるのが分かる。 先に他の部屋でケルベロスの情報を取得していない場合、≪オカルト≫成功によりこの異形の存在がケルベロスだと分かる。すでに情報取得していた場合は≪アイデア≫成功により分かる。 さらにオカルトでは伝承のケルベロスの能力や弱点なども詳しく分かる。 <ケルベロス情報> 冥界の王、ハデスの忠犬であり、冥界の扉を守護している。 冥界に来た死者に対しては友好的だが、逃げ出そうとするものや許可なく立ち入ろうとうする生者は容赦なく捕らえて貪り喰う。 口からは青白い炎を吐き、三つの首と背に無数の蛇を持ち、尻尾は大蛇という魔獣。 猛毒植物であるトリカブトはケルベロスの唾液から生まれたとも言われている。 三つの頭が交代で眠るが、音楽を聴くとすべての頭が眠ってしまう。また蜂蜜と芥子の粉を練って焼いた菓子が好物で、それを食べている間に出し抜くことが出来る。 ケルベロスはこちらが攻撃したり、不審な動きや鍵に近づこうとしない限り攻撃してくることはない ※戦闘するとロストする可能性が高いです。無茶をしようとする探索者には、ケルベロスに火を吐かせたりして少し脅したりしてもいいかも。 <ケルベロスもどき(ニャルラトホテプの化身)のステータス> STR:24 DEX:22 INT:13 CON:32 POW:27 SIZ:18 耐久25 移動2 ダメージボーナス2d6 ケルベロスの噛み付くは1ラウンドに3回攻撃することができる。 武器:噛み付く90% 1d6+db+トリカブト(POT25)爪90% 1d6+db 炎を吐く80%(※100%)射程25 2d6+ショック ※探索者が部屋の廊下に居る場合は回避不可 毒(トリカブト)POT25 発症時間10分~20分 症状:舌の痺れ、嘔吐、呼吸麻痺、心室細動など ※もしケルベロスを倒した場合はED⑤へ <802号室> 復活の呪文がある部屋 リビングの真ん中にはテーブルが一つあり、一枚の白紙が置かれている。 そこには『我が罪と禁忌は我が身に隠し、獄炎の上で許しを請う』と書かれている。 その紙を部屋にあるキッチンのコンロで炙り出しすれば【復活の呪文】とそれに関する情報が浮かび上がってくる。 紙に≪アイデア≫で、文章の下はやけに余白が大きく空いていることに気づく 【復活の呪文】 ※詳細はルルブP279参照 浮かび上がったメモの概要:死体を塩と化合物に分解し、青っぽい灰色の粉にしてしまう。その過程を逆方向に働かせて死んだ人間の体や魂まで形作ることが出来る。 完全な死体が必要である。不完全な場合は「口にするもおぞましきもの」となる。 この呪文を使用すると術者も復活する犠牲者も精神を大きく摩耗することになるだろう。 呪文の文句を後ろから逆に唱えることにより、復活した者を元の灰色の粉に戻すことが出来る。 人として侵してはいけない領域を超えた冒涜的な魔術の知識に触れてしまったことによりSANチェック(1/1d4) <803号室> 神奈夫妻の部屋であり、儀式が行われた場所。中には「口にするもおぞましきもの」となってしまった神奈愛莉が居る。 ドアには鍵が掛かっており、501号室で入手する鍵によって開錠可能。≪鍵開け≫は不可。 ドアには血でおびただしい数の目とその上から×がされた絵が描かれている。そのゾッとするような異様な光景をみたあなた達は言葉を失うだろう。SANチェック(0/1) 鍵を開けるとすすり泣きのような――それとも唸り声なのか、女の声が部屋に響いている。 リビング以外の他の部屋の扉は全て板で打ち付けられ封印されており、壁は一面掻きむしったような血の跡がついている。 恐る恐るあなた達が部屋に入ると、まるで隠れるように血で汚れた白い布をその身に纏い、リビングの隅に居た一目で異形と分かるそれと対面するだろう。 かろうじで人間だったと分かるが、口にするもおぞましく形容し難い姿をみてしまったあなた達はこみ上げてくる嫌悪と恐怖を抑えきれないだろうSANチェック(1/1d8) そしてその異形はゆらりとあなた達を見据えると、「みるなぁあぁぁぁあ!!」と絶叫しながら鈍く光る凶器を振り上げながら襲い掛かってくる。 (KP情報:神奈愛莉と対面したことにより、神奈慶一は記憶をすべて取り戻している。それを匂わす描写を入れてもいいだろう。また、慶一はSANチェックしなくてもいい) 神奈愛莉(ルルブのゾンビを参考) STR:9  DEX:12 (INT:生前は13) CON:?? (APP:生前は13~16ぐらい) POW:2 SIZ:10 (EDU:生前は16)SAN:1 MP:2 武器:肉切り包丁(40%)ダメージ1d6 噛み付き(30%)ダメージ1d3(※組みつかれている場合は自動成功、組みついてる相手とPOW対抗で愛莉が勝った場合は組みつき解除となる) ※KPの裁量で調整可 <神奈愛莉との戦闘に関して> ・805号室で入手した香水をあらかじめつけているor襲い掛かってきた神奈愛莉に対して香水をかければ正気に戻すことができる(その場合DEX×5で判定) その場合神奈愛莉は神奈慶一と探索者達に対して「お願い…私を…死なせて…」と苦しそうに懇願してくるだろう。しかし正気に戻るのも一瞬のことで、再び襲い掛かってくる。 (KP情報:これはニャルラトホテプの差し金によるものである) 通常の攻撃では神奈愛莉を倒すことは出来ない。倒すには復活の呪文を逆に唱える必要がある。呪文を使う際、使用者はMPによる対抗ロールを行い、SANチェック(1d10) 復活の呪文には2ラウンド必要である。その際、まず消費するMP3を引いてからのMP対抗ロールとなる(ルルブP114) (KP情報:神奈愛莉は復活の呪文の反動により不定の狂気状態(殺人癖)にもあるが、ニャルラトホテプの手心によりPOWを減らされ、操られている部分もある) ・戦闘開始して2~3ラウンドたっても探索者達が復活の呪文を使わない際は、NPCが唱えだす。ED分岐にも影響する。 ・攻撃により探索者が危険な状態になりそうな場合はNPCにかばわせる、呪文詠唱の手助けをさせるなど、探索者達の行動をみてNPCの動かすといいだろう。 <804号室> 寝室に≪目星≫でベッド横の棚に殺風景な部屋に似つかわしくない、美しく装飾されたオルゴールがあるのを発見する。 中を開けるとショパンの「別れの曲」が流れてくる。 ・曲名は≪芸術(音楽)≫など音楽関係の技能か、もしくは知識の-20で振らせて成功したら分かることにしてもいい (※KP情報 このオルゴールは神奈愛莉が大事にしていたものであり、曲も彼女が生前好きだったものである) このオルゴールの音楽を801号室のケルベロスに聴かせている間、ケルベロスは眠ってしまうのでその隙に鍵を取ることが出来る。 リビングにはソファーが一つあり、そこに一冊の本が置いてある。 本にはギリシャ神話のオルフェウスの物語が綴られている。 竪琴の名手であったオルフェウスにはエウリュディケという美しい妻がいたが、ある日毒蛇に咬まれて死んでしまう。 嘆き悲しんだオルフェウスは愛する妻を取り戻す為に死者の国である冥府に向かうことを決意する。 彼が竪琴を奏でると立ちはだかる冥府の番犬ケルベロスさえもおとなしく眠らせ、またその悲哀に満ちた音色は冥府の王ハデスの心をも動かした。 特別にエウリュディケを連れ帰ることを許したハデスだが、一つだけ条件を付ける。 「地上にたどり着くまで、けして振り返ってはいけない」 そういってエウリュディケをオルフェウスの後ろに従わせた。 冥府からもう少しで抜け出すというところで、エウリュディケがついてきているか不安に駆られたオルフェウスは後ろを振り返ってしまう。 するとそこには悲しそうな顔をしたエウリュディケが立っており、彼女は再び冥府へと引き戻されてしまった。 <805号室> リビングにはテーブルがあり、その上には美しい螺鈿細工の櫛、薄いピンク色の香水(匂いを嗅がせたりして桃の香水だと教える)、葡萄をあしらったブローチの三つの品物と一枚のメモが置かれている メモには『愛しい者にもう一度会いたいならそれに相応しいおめかしを。ただし身に纏えるのは一つだけ』と書かれている ※正解は桃の香水、他はダミー。『黄泉の国』の神話において、追っ手を追い払うことができたものは桃だけである。 【香水には発狂状態にある神奈愛莉を一瞬だけ正気に戻す効果がある】 ここで二つ以上持ち出そうとしたらドアが開かず部屋から出られない。閉じ込められた事に気づいた探索者達はSANチェック(0/1) ※KPの裁量でペナルティを変えて難易度を調整しても良い ここであらかじめ探索者が香水をつけて神奈愛莉と対面した場合、襲い掛かられる直前にその香りにより神奈愛莉を一瞬正気に戻すことが出来る 浴室で≪目星≫をすると、バスタブの中に古事記の『黄泉の国』について書かれた本が置いてある 火の神を産んだ際、その火傷によって死んでしまったイザナミを恋しく思いイザナギは黄泉の国に赴く。 黄泉の国を訪れたイザナギを出迎えたイザナミの姿は生前と変わらず、一緒に国へ帰ろうと懇願した。 「どうしてもっと早く迎えにきてくれなかったのですか。私はもう黄泉の食べ物を食べてしまったので簡単には帰れません。黄泉の神に許しをもらってくるので待っていて欲しい」 そして「その間、私の姿はけしてみないでください」と言い残して奥に入っていく。 しかしどれだけ待ってもイザナミは帰ってこず、痺れをきらしたイザナギは約束を破って奥を覗いてしまう。そこには腐敗し蛆虫と雷神を体にまとわせ醜く変わり果てたイザナミの姿があった。 驚いたイザナギは逃げ出し、イザナミは「恥をかかせたな」と激怒し、ヨモツシコメ達にあとを追わせる。 イザナギが蔓草の冠を投げつけると、山葡萄の木が生えてきてヨモツシコメ達はそれを夢中で食べ始める。 その隙にイザナギは逃げるが、追いつかれそうになると、今度は櫛を投げつける。するとみるみるとタケノコが生えだし、ヨモツシコメ達は再びそれに群がる。 黄泉の国の境である黄泉比良坂まで逃げおおせたはいいものの、今度は黄泉の軍勢を率いてイザナミはイザナギを追いかけてきた。 イザナギは近くに生えていた桃の木からその桃の実を三つ取って投げつけ、黄泉の軍勢を追い払った。 それでも追いかけてきたイザナミにイザナギは大きな岩で坂を通れないように塞いでしまい、その岩をはさんで離縁を宣言する。 するとイザナミが「あなたがそうするなら、一日にあなたの国の人間達を千人殺しましょう」というと、イザナギは「ならば私は一日に千五百の産屋を建てよう」といった。 こうして地上では毎日千人が死んで千五百人が生まれるようになったのである。 ≪オカルト≫か≪歴史≫に成功すると、古代日本では桃には邪気を祓う霊力があると信じられていたということが分かる <ED分岐> ※エレベーターは誰かが一人命を捧げた状態でないと動かない。 なので、もし一度死んだ後復活の呪文を使って蘇ったとしても、エレベーターは再び動かなくなる。 ①香水を使って神奈愛莉を正気に戻した&探索者が復活の呪文で倒した&神奈慶一生存(Good end) 復活の呪文を唱え終えると、神奈愛莉は糸の切れた人形のようにガックリと動きを止め、みるみるうちに足元から粉となってゆっくりと崩れ落ちていく。 探索者達に向かって「ありがとう」と静かに告げる。そして神奈慶一に向かって「何があっても振り返らないで…前を向いて…生きて……」と呟く。最後に見えたその眼差しは穏やかで、生前の頃のように美しいものだった。 最後の廊下のヒントは、オルフェウスの物語と神奈愛莉の最期の言葉となっている。探索者が後ろを振り返ろうとした場合は、神奈愛莉の最期の言葉を思い出したことにさせよう。 ②神奈愛莉を正気に戻せなかったor神奈慶一に復活の呪文を使わせた(Normal end) 神奈慶一は灰色の粉だけが残ったそこを静かに見つめ、その手にはいつの間にか肉切り包丁が握られている。 あなた達はそれに気づき止める間も無く、白刃が真っ赤に染まるのと傾いていく神奈慶一の身体を目に焼き付けることになるだろう。SANチェック(0/1d4) (KP情報:愛莉を正気に戻せなかった場合は最期の言葉を聞けない為、NPCは自殺してしまう) ※神奈愛莉を正気に戻せなかった場合は最期のヒントが無いため、帰り道の難易度が少し上がるかもしれない。KPの裁量に任せるが、振り返りそうになったら≪アイデア≫を振らせてオルフェウスの物語を思い出させてもいい <最後の廊下(ED①、②共通部分)> 部屋から出たあなた達は暗い廊下の奥で、消えていたはずのエレベーターの明かりが来たときと同じように再び煌々とついていることにすぐ気がつくだろう。そして「帰ることができる」と直感する。 あなた達は逸る気持ちを抑えきれぬままその光に向かおうとする。 その時、あなた達は背後から聞こえてくる足音に気づくだろう。その足音は一定リズムを刻みながら、どんどんあなた達に近づいてくる。 そして『それ』はまるで醜悪な獣の咆哮のように、すべてをあざ笑うかのようなおおよそこの世のものではない甲高い不協和音を響かせながらあなた達のすぐ背後まで迫ってくるだろう。SANチェック(1/1d6) ※ここは後ろを振り返るとニャルラトホテプとご対面してロストしてしまう。 その場合は巨大なかぎ爪のモンスター姿のニャルラトホテプを目撃してしまう。SANチェック(1d10/1d100) そしてニャルラトホテプは振り向いた探索者を捕まえて高笑いをしながら赤い空の彼方へと消えていくだろう【ロスト】 ※ここはエレベーターに着くまで色々な演出をして脅しましょう あなた達は必死でエレベーターに向かおうとするだろう。だが足が異常に重い。まるで鉛のようで思うように動かせない。 『それ』の不快な叫び声はあなた達すぐ傍にあり、あなた達の服、髪、腕…あらゆるところにまるで引きずり込もうとするかのように掴みかかろうとしてくるだろう。 恐怖でどうにかなってしまいそうな思考を奮い立たせながら、あなた達は無我夢中で足を動かす。 一歩、一歩と光に近づき、やっとのことで雪崩れ込むようにあなた達がエレベーターに乗り込むと自然に扉は閉まり、エレベーターが動き出すだろう。 先ほどまでの喧騒は一瞬にして止み、ただただエレベーターは機械的に下降していく。 そして静かにマンションの1階へと到着する。扉が開いたそこには、明るい昼下がりの日差しと、人が居て、車が走っている。そんないつもと変わらない風景がそこにはあった。 ③復活の呪文を使わず、神奈愛莉と対峙せず逃げ出した(Bad end①) あなた達が部屋から逃げ出す中、神奈慶一はただただ力なくその場から動こうとしないだろう。 ここで≪聞き耳≫を振らせて成功すると、ぐしゃりという音と床になにかが倒れる音が聞こえる。SANチェック(0/1d3) 神奈愛莉とのDEX対抗となる。失敗した者は自分に襲い掛かってくる神奈愛莉の姿とニャルラトホテプの姿をみることになるだろう【ロスト】 目の前で探索者がロストしたことにより、その場に居た他の探索者はSANチェック(0/1d6) エレベーターには乗れるので帰ることが出来るが、生き残った探索者も精神を病むことになる。 ④神奈愛莉と対峙する前に何らかの理由で探索者or NPCが死亡して探索途中で帰還した場合(Bad end②) <脱出するために探索者or NPCを殺害した> 条件は満たしている為、エレベーターは再び稼働し、元の世界に帰ることが出来る。 もしNPCが生きている場合は、「自分は戻れない」と言い残し、この世界に残る(探索者が死んだ瞬間、ニャルラトホテプの裁量により記憶を取り戻しており、自分の行いが原因で無関係の人間を死なせてしまった罪悪感と贖罪から) 最後の廊下の下りは他のED分岐と同じだが、探索が途中で情報を入手していない場合は全員ロストということもあり得る。 生き延びて元の世界に帰ったとしても、この場合は現実世界のマンションで死体が発見され、いずれその捜査の手は探索者達へと延びるであろう【逮捕ED】 <その他の理由で探索者or NPCが死亡> 殺害した場合のED展開とほぼ同じだが、この場合は現実世界で死体は出てこないで行方不明扱いになる。 いっそ恐ろしくなる程に何も変わらないいつも通りの日常が逆に探索者達を追い詰め、探索者達は徐々に精神を蝕まれることになるだろう【鬱END】 ⑤ケルベロスを倒した場合 倒したケルベロスの身体がブルブル震えながら膨らみ破裂すると、そこから巨大なかぎ爪のモンスター姿となったニャルラトホテプが出てくる。 この姿をみた者はSANチェック(1d10/1d100) それと同時にこの異空間がまるでパズルのピースが崩れていくかのように崩壊していくだろう。 姿をみせたニャルラトホテプはそのまま赤い空へと飛び立ってしまう。 あなた達が最期に目に焼き付けたものはそのニャルラトホテプの姿なのか、血のように赤い空なのか、それとも別の何かなのか――もはや知る術もないだろう。【全滅END】 <good endエピローグ>  ※マンション住人である探索者視点 それから数週間がたっただろうか、あの出来事から少しずつ日常を取り戻しつつあったあなたは、マンションの入り口付近で引っ越し業者のトラックが止まっているのを見かける。 あなたが何となく次々と運び出されていく荷物を見送っていると、最後にマンションから出てきた人物――神奈慶一と目が合うだろう。 驚いた表情をしているあなたに気づいた神奈慶一は立ち止まる。すこし疲労の色は見えるが柔らかく微笑えみ、あなたに向かって深々と一礼をすると静かに車に乗り込みその場から去っていった。 『その命を捧げよ』クリア <クリア報酬> ・シナリオをgoodかNormalでクリアしたSAN(1d10)回復 ・神奈慶一を生還させたSAN(1d4)回復 ・探索者全員生還したSAN(1d4)回復 ・『復活の呪文』を見つけていた場合は呪文入手